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日々のことを徒然と・・・。ってFFの事は全然書いていないなぁ(汗)


by rucie4
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塩野七生「危機と克服 (下)」読了

ローマ人の物語〈23〉危機と克服〈下〉
塩野 七生 / 新潮社
ISBN : 410118173X
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実は2006年初投稿かも。地味に忙しかったのかな、最近。
ヴェスパシアヌスの死により即位したティトゥスの短い統治と、死後に記録抹殺刑にあってしまった弟ドミティアヌスの統治、そしてネルヴァという五賢帝時代にさしかかる巻。
ヴェスパシアヌスが敷いた順調に即位する為のレールを歩んだティトゥスは、それまでの実績を生かすだけの善政だったと言える。だが惜しくも数年で病死してしまったからいえるのかもしれないのは確かだ。それに代わって弟のドミティアヌスは約15年もの長期間の統治であっただけに、暗殺という幕切れでフラヴィウス朝が潰える事になってしまった。しかし政治家が失脚せずに有終の美を飾れることは少ないのではないだろうか。

そして、人々から愛されていたティトゥスの短い統治の間に起こった災害は、悲惨を極めるものだったのだろう。ヴェスヴィオ火山の噴火によるポンペイの沈没は当時の手紙を見る限り現代の阪神大震災よりも酷いことは確かだ…。

来月末、卒業旅行としてイタリアを回るが、早く色々な街を見て回りたい!



灯一つない閉めきった部屋の中にでもいるような、奇妙な感じの夜だった。その暗闇の中に、叫び声だけがとび交っていた。女たちが嘆き悲しむ声、子供たちの泣き叫ぶ声、男たちの怒鳴り声。親を探す声、子を呼ぶ声、妻を夫を、声で聞き分けようとして呼びかける声。あるものは自分たちの運命を嘆き、他の者は肉親を襲った不幸を嘆き、別の者は、死への怖れのためにかえって死を呼ぶ。多くの人は両手を上にあげて神々に祈っていたが、それと同じくらいの数の人が、もはや神々はいない、この闇は永遠につづいて世界の終末に至るのだと叫んでいた。



皇帝の死を知った人々のすべてが、心の底から嘆き悲しんだ。ユダヤ王女との結婚に反対して競技場でブーイングを浴びせた一般市民も、それをまじめに受けて独身のままで通したティトゥスを愛していた。被災地で陣頭指揮をとる皇帝。公衆浴場でもしばしば見かけた皇帝。庶民にとっての理想の皇帝を、ティトゥスは体現していたのである。ティトゥスは、恒例になっていた皇帝から市民に贈るボーナスを、一度も実施していない。だが市民たちは、たび重なった災害に彼が私財を投げ出したのを知っていた。

by rucie4 | 2006-01-12 00:54 |